第39章 自我の芽生え、そして…
「…一つ勘違いをしているようだが…
僕は小さい頃から一度たりとも奴を”父親”として見たことはない。
教育者と生徒。それが僕等の家族の形だ」
彼もまた、一つの家族の形に囚われている。しかし、それを彼は苦痛だと思っていない。
優秀な人材なのに…指示待ち人間に成り代わってしまうのは惜しい
「しかし、他の生徒はそうもいかない。
他者を蔑み、その危機感でしか成長ができないのであれば、それは三流以下だ。
いずれ限界が来る。
正しい敗北を、僕の仲間と父親に」
そう言って深々を頭を下げた
皆なんて反応すればよいか困った顔で見合わせる
「え?他人の心配してる場合?一位取るの君じゃなくて俺なんだけど」
その中で赤羽さんはいつもの調子だった
「言ったじゃん。次はE組みんな容赦しないって、。一位は俺でその下もE組。浅野君は十位辺りがいいとこだね」
「おーおー。ついに業が一位宣言」
『結局一番燃えてるの自分じゃないですか…』
「前の期末みたいな結果はごめんだけどね」
「浅野君が本気出すか出さないかなんてこっちには知ったこっちゃないけどさ。
殺す気でぶつかり合うのって最高に楽しい。
せんせーから学んだよ」
「…!」
「ま、好きにしなよ」
そう言って一人帰って行った
『まあ、こちらとしてはようやく気付きましたかって感じですけど…』
「…早稲田」
『私、貴方の事キライでした』
「なっ…!?」
『束縛と支配に執着してる辺り…理事長と私の父親にそっくりだったから』
「……
君の話は父から聞いた」
『…知ったんですね、私がE組に降格した本当の理由を。
落胆しましたか?幻滅しましたか?』
「…」
『どちらにしろ、もういいです。昔の話をするのは好きではないので。
もうあの時の言葉は分かってくれたでしょう。E組に居れば、少しずつ何かが変われてる気がしてるから…本校舎には戻りたくない。
本番どうするかはお任せしますけど…
久しぶりに凌ぎ合い、しませんか?』
「凌ぎ合い…」
『あの時と同じように。
今ならそれが、再びできる。私が勉学を仕事だと思っていない今なら』
「…」
『楽しみにしてますよ』
「…望むところだ」
浅野さんは静かに笑った