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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第36章 古傷の時間


その後、イリーナ先生が戻ってくることはなかった。それも数日間。倉橋さんの表情も日に日に暗くなっていく

『だ、大丈夫ですよ。あの人少し寂しがり屋なところありますし…』

何とか声をかけているけれどそれにも限界がある。みんなもその異変に気付き始めた


「…このまま、バイバイなんてないよな…?」

千葉さんの言葉に皆が顔を下げる
















「そう。彼女にはまだやってもらうことがある」





声がするまで気配に気づけなかった。振り向くと茶髪の好青年がニコニコしながら立っていた


「初めまして。僕は死神と呼ばれる殺し屋です。今から皆さんに”授業”をしたいと思います」


「………死神…?」
渚さんが僅かに顔をしかめた












―――


『う、……うん…?』
「遊夢ちゃん!」
ぐらついた頭と視界で初めて入って来た情報は渚さんの私を呼ぶ声だった。まだ体が思うように動かない。立ち上がる足が小鹿のように震えていた

『…(麻酔…?)』
ふわふわぼんやりとする感覚には少し覚えがあった。傍にいた渚さんが何とか抱えて起き上がらせてくれた

『私は……何を…』
周囲を見渡すと格子の入り口が見えた。手元を見ると見慣れた制服ではなく支給された装備が。麻酔の作用で前後の記憶が抜けている…思い出せ。私は……


そうだ、イリーナ先生がいなくなって……


死神と名乗る男性が彼女の事を知っている素振りを見せた…だから……



『……!』
現状と断片的な記憶から推理されたことに顔が青くなる。イリーナ先生を助けに行った。囚われた彼女の姿もこの目で目視している筈。

なのに、どうして私達は拘束されているの?



『う、嘘だ…』





イリーナ先生は、裏切ったんだ。

けど、全員袋の鼠だ。私達にできるとはない


『は、早く先生たちに知らせなきゃ…』
「無駄な抵抗はしない方がいいよ」

靴音を鳴らしながら例の死神君が登場した

「君たちの動きはカメラでちゃーんとみてるからね」
立方体の部屋の隅には確かに監視カメラが起動していた

「少しでも怪しい動きをすれば首元につけられてる爆弾を起動させるよ」
片手でスイッチをひらひらさせる死神。
『!』
首を触ると確かにごつい物が付けられていた

”人質”。あいつから見える私達の役割はそんなところだろう
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