第36章 古傷の時間
『わああ…』
新しい匂いがする新品の装備に袖を通して感嘆の声を漏らした。わかばパークでの出勤の後、烏丸先生からプレゼントがあった。国から新しい体育着を支給されたのだ
「皆よく訓練に励んでいる。奴の暗殺成功率を上げる為にもグレードアップさせる必要がある」
との事
布が厚めに作られており、激しい地形の中でも怪我をしないように設計されている。それこそ、火の熱をある程度防げるくらいに。自衛隊のような装備品に皆も大興奮
私達は改めて誓った。この力は、他人を「守る」為に使う、と
『で、でもちょっとお尻のサイズが…』
「「「「(……やはりヒップが…(汗)」」」」
この声は男子のみぞ知る。
後日……
「うわああああ!!早稲田さああああ!!」
『え』
赤く目を腫らした倉橋さんが私に抱き着いてきた
「私のせいなんだ、私が悪いんだああああ!!」
『ちょ、一旦落ち着きましょう!ね?』
いつも明るくニコニコしている彼女がこんなにも大人げなく泣いているのは珍しい。少し異変を感じた私は話を聞くことに…
『なるほど…つまりこういう事ですか?
イリーナ先生の誕生日を祝うために烏丸先生に協力して貰った処、作戦がばれて激怒した、と』
「…その時の顔が本気で怒ってる感じで怖かったから……初めてこの教室に来たみたいに…」
『!』
彼女は元々腕の立つ殺し屋であるけれど、一度ボロが出ればそこからどんどん崩れていくタイプの人だ。ちょっとツンデレ気味でキレやすい部分を私達は散々見て来た訳だが。
私達は事実を長い事忘れていたようだ。
『それで、その後は…』
「そのままどこかに行っちゃった…
私が…余計な事したから…」
ビッチ先生に喜んで貰いたかっただけなのに…と肩を落とす倉橋さん。彼女は誰にでも隔たりなく明るく振る舞うが、その分責任感を強く感じてしまうし自分が犠牲になろうとする部分が少しある。これ以上彼女に負の感情に呑まれては私の目覚めが悪い
『烏丸先生は…?』
「相談してみたんだけど、…」
<いつもの事だ。機嫌が直ったら戻ってくる>
「って…あんまり問題視してなさそうで…」
『烏丸先生……
相変わらず女心分かってませんね…(汗』