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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第34章 いわし雲の体育祭の時間


「はい、あーん」
『あーん…?』
「ユーミン可愛いー!!」
『しゃ…写真撮らないで下さいよ…///』


「ここでいちゃいちゃしないでよ、茅野さん…(汗」
「あははーごめんごめん」

ここは”kunugi-kaze"と呼ばれている喫茶店の一角。対面に座る茅野さんからケーキを食べさせられた。思いの外量が多くて暫く口をリスのようにもごもごさせてた。片岡さんに注意されたが、うん、恥ずかしい

「こっちの反応困るのよ」
「百合……アリだ…」

前原さんと岡島さんが続いた。引き連れた人数もそこそこ多かったのでテーブル席でも結構身を寄せ合って談笑していた。そして斜め前には私の口元をじっと見つめて唾をゴクリと飲む渚さんが

『…?
欲しいんですか?』

「あ、いや///あはははは…」

誤魔化された。
とはいえ何故普段友達と外出などしない私が放課後の寄り道に付き合っているのか、理由はそこにある。





「お前等…程々しておけよ?」

店の清掃でエプロンを腰に巻き付けた磯貝さんが通り際に話かけた。そう、ここは彼のバイト先なのだ

「お、バイト中のイケメン君じゃねーか」
「何だそれ…
粘るなよ、紅茶一杯で」
「良いだろー?バイトしてんの黙っててやってんだから」
「はいはい、ゆすられてやりますよ」

彼は人間性に至っては欠点がないと言っていい程よくできた子だ。勤勉はもちろん貧しい家族の事も常に気を遣うとても優しくまさしく学級委員長の器を持った人なのだ

と油を売っていると思ったらいつの間にか目の前の空のカップが埋まっていた


「出涸らしだけど、紅茶一杯おまけだ」


「「「「(イケメンだ…!)」」」」

それ故か彼の行う行動全てが神々しく見えるのは私の幻覚か…



全てのカップに注ぎ終えるとすぐに仕事へ戻って行った。両手で高く盛り上がった食器の数々が店の中を動いている様は当然のように目立つ

「あんなに一度に運べるなんて…」

「「「「(イケメンだ…!)」」」」




「なあに、またお母さん体調崩されたの?」

「ええ、まあ。うち母子家庭なんで俺も少しは家計の足しにならないと…」

「「「「(イケメンだ…!)」」」」



「あいつの欠点なんて貧乏くらいだけどさ、それすらイケメンに変えちゃうのよ」

前原さんの言葉に女子二人が前のめり気味にうんうんと頷く
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