第31章 残夏の疑惑の時間
「ま、あいつら基本バカだから仕方ないよ」
「うん。でも、イトナ君ちょっとだけ楽しそう」
横で赤羽さんと渚さんがそんな様子を覗く。確かにこういう普通じゃない事をすることで怒りを和らげる方法もありか。
あのグループとはいくらかいざこざもあったけど…何だか、あの人達に任せても大丈夫な気がした
『あ…(汗』
油断してたらカーブで曲がり切れず後ろに乗った堀部さんが吹っ飛ばされた
と、その内に狭間さんが堀部さんに近寄り何かを手渡す。彼女はあの三人の中でもまともな人だから何かいい手立てを持ってそう!と期待してみたものの周囲にいた松村さんと吉田さんは白目剥いていた
…狭間さんは読書好きだから本…なのかな?(汗
余り内容を知りたいとは思わなかった
すると、堀部さんの顔がみるみる暗くなっていく
フェンスの外で何事かと様子を凝視していると
触手がヘアバンドを突き破り再生した。まずい…といつでも援護できるように全員身構える
「俺は適当にやってるお前等とは違う…!!今すぐあいつを殺して”勝利”を……」
堀部さんの言葉に黙って聞いていた寺坂さんが一歩、また一歩と近づき始めた。二人の咎める声も気にかけないまま
そして目を反らさずに言う
「おいイトナ、
俺も考えてたよ。あんなタコ今日にでも殺してえってな。
けどな、テメェに今の奴を殺すなんて無理なんだよ」
それは、先生という意味でもあるしシロ、或いは自分の両親の事を言っているのかもしれない
「殺せねぇビジョンなんて捨てちまえ。楽になるぜ」
「ッ…うるさい!!!」
叫んだと同時に触手が寺坂さんを襲う。
が、彼は顔をしかめながらも触手を肘と膝で押さえつけた。弱体化してるとはいえ、あの異物に同等で戦うパワーを持つ彼には毎度本当に驚かされる
「二回目だし、弱ってるから捕まえやすいわ。吐きそーなくらい痛てぇけどな」
堀部さんは悔しそうに歯ぎしりを鳴らし肩で息をする
「吐きそーと言えば村松ん家のラーメン思い出した」
「んなっ…」
彼の突っ込みも無視して続ける
「あいつな、あのタコから経営の勉強勧められてんだ。今は不味いラーメンで良い。いつか店を継ぐ時があったら新しい味と経営手腕で繁盛させてやるってよ」
「…」
「吉田も同じ事言われてた。”いつか”役に立つかもしれないって」