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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第31章 残夏の疑惑の時間


人気ない廃坑した建物に彼は立っていた。

片手には携帯を握り締めている。それを見つめる瞳は細く、暗かった。彼が今唯一悲しみという感情を取り戻せる物なのかもしれない


気配に気づくと視線が合う


『堀部さん……

もういい加減自分でも気づいているんじゃないですか?

この際ですからはっきり言わせて貰います。強さにこだわったって、貴方を満たせる物は何もありません』

「ユーミン…」

分かってる、自分でもこんなこと言うのめったにない。けれど、何故か彼の為なら身体が動く気がするのだ








『過去は変えられない。失ったものばかり数えてもやつれていくだけです。

貴方を「必要ない」と捨てた者よりも、貴方を大事に思ってくれる人達の事大切にしてはどうですか?』



ああ、この矛盾が誰にも気づかれていないことをいいことに…私はなんて卑怯なんだろう



この言葉が、

自分自身に言えたらいいのに……





「…俺は、弱い奴が嫌いだ。けど俺は……あいつよりも弱かった。

だからシロに捨てられた…


強くなりたかった。
きれいごとも遠回りもいらない。負け惜しみの強さなんて反吐が出る。


…勝ちたい。勝てる強さが欲しい」


小さく呟かれた筈の言葉は、この場に確かに響いた


「やっと人間らしい顔が見られました。イトナ君」

「兄さん…」

「殺せんせーと呼んで下さい。私は君の担任ですから。

それにしても、助かりました遊夢さん」

「どういう事?」

『彼の本心を皆さんに聞いてもらうために敢えて彼の主義を真っ向から否定したんですよ。

まあ、他人の好みは自由ですが、
先程言ったことは私の本心そのままですよ』

「ヌルフフフ、相変わらず君は心理戦に長けている」

「拗ねて暴れてんじゃねーぞ、イトナ。テメェには色んな事されてきたけどよ、水に流してやっから大人しくついて来いや」



堀部さんはその言葉にゆらりと立ち上がりながら「黙れ」と突っぱねた。
地面に叩きつけられた携帯は無残に粉々になってしまう。私はその様子を悲しい目で見つめていた

「勝負だ。…今度は必ず勝つ」

「勿論勝負しても良いですが…お互い国家秘密の身。どこかの空き地でやりませんか?」

『…!』

先生…
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