第31章 残夏の疑惑の時間
『…?
貴方にはそう見えたってことですか?』
「…」
質問の意図が分からなくて聞き返した。沈黙の肯定のようだ
『何故か………
自分でもよく分からないんですけど…
多分、大きく理由は二つ。
一つは、もう既に似た類の恐怖に慣れてしまっているから
二つは、
恐怖よりも貴方への憐れみの方が強いから』
「…!」
『さっき何があったのか知りませんけれど…私は元からシロを信用していません。もうやり口は大体目星がつく。
だからこそ分からない。貴方にどんな辛いことがあって首を垂れることになったのか、どうしてそんなにも強さにこだわるのか。
堀部さん私はもう、同じ光景は…見たくないです』
「………………
俺は…強くなくちゃいけないんだ…
そうしなきゃ……
戻って来てくれない…」
『?』
「早稲田さん!!」
堀部さんが謎の独り言を言った時、横から誰かが私を呼んだ。誰かに目撃されるのはまずいと思ったのか彼は触手を離し闇に駆けこんだ。そろそろ呼吸も限界だったので丁度良かったのだけれど
ようやく重力が働き、私はアスファルトに叩きつけられる
が、誰かが抱えてくれて変な入り方はしなかった
『ゲホゲホッ…』
「大丈夫、無理に焦ると気管支に入る。落ち着いて呼吸して」
朦朧としていた世界もようやくピントが合って来た
『あ、ありがとうござい、ます』
「ん、どういたしまして」
ん?と思って顔を上げるとにっこにこの水色ツインテールがいた
『うkぇnあっ!?』
「?」
カバンで必死に顔を隠した。そりゃあビビる。避けて通ろうとしたルートに君がいるのだから。
ってことは咳してた時にずっと背中さすっててくれたのも彼!?始め名前呼んだ時苗字呼びだったからすっかり騙された!!いや、騙してたのかは知らないけど
うん、極端な話
イケメンだよね、彼。
という事は……例のいつメンも…
「大丈夫、ユーミン?」
「夜道にとんだ災難だったねー、ひつじちゃん☆」
アー、ヤッパリ?あと何お前楽しそうにしてんじゃ!
『っていうか皆さん、ニセ先生を探してたんじゃ…?』
「まあね、ちょっと色々収集があったのよ。
その話は次の日にでもしましょ。とっくに日はおちてるし」
不破さんが背中で語った