第31章 残夏の疑惑の時間
『はっ、はっ…』
本日の体育の授業は暗殺ドロケイ。勿論ただの、ではない。鬼役はあの烏丸先生なのだから。(あと何故か先生も牢屋に鬼役としている。警官の格好してノリノリだった)
烏丸先生のグローブにはインクが付いている。私達の体育着にペイントが付着すれば確保の合図だ
あの烏丸先生だからこの山の中とは言え容赦はしないだろう
『それにしてもドロケイなんて久しぶりです…』
「え、ドロケイ派?」
『え、ケイドロ派?』
近くを走っていた岡島さんと顔を見合わせた瞬間、
烏丸先生は前にいた
「甘い、一瞬の隙が命取りになるぞ」
まさかと思い背中を見ると、オレンジの手型が付いている
『ひゃ…』
ルール上、捕まった人は牢屋ゾーンにいなければならない。
「あんなの見つかったら確実に無理ゲーじゃん」
『……大丈夫、もう覚えた』
「何を?」
『だったら見つからないか、脚を止めればいい。あのスピードならできる罠は結構あるかな』
ただ問題は牢屋にもある。あの烏丸先生もに比にならない位のスピードを持つ先生が看守なのだからそれこそ一度捕まってしまったら脱出は不可能なのだ。ルール上はOKなのになんかずるい
様子を見ていると近くの草陰から磯貝さんがサインを出した
(センセイ、ナントカ、セヨ)
お互い頷くと、岡島さんが立ち上がった。スッと何かを取り出し先生に渡す
……買収されてる…
「……皆には内緒だぞ…」
我らが先生は中学生でも相手になるくらいチョロいのだ。
矢田さんも負けじと続ける
「先生、私今日ね入院してる弟と話したんだ、今日体育でドロケイするんだって。そしたら、絶対捕まらないでねって応援してくれて…」
段々鼻声になる。先生の後ろ姿を見るとなんか微動してる
「くっ…行け…!」「ありがとせんせー」
即棒読みでその場から離れた
結果的に捕まりはしたが脱出することができた人が多数。これでは訓練にならないと先生が烏丸先生に叱られてた。私達は確保数をお互いに比べ合っていた
「ユーミンは幾つ~?」
『一回。一度捕まってからは一度も』
「やるじゃん!罠とか使い方上手かったね」
『…』
―――君はトラッパー向き体質だ。
ロヴロさんに夏休み、そう言われていたのを思い出す。本当に…いざとなれば…
使う時が来るのかもしれない