第30章 それぞれの暗殺の時間
「ほ、本当に先生が食べていいんですか!?」
差し出されたプレゼントに目を輝かせて言う先生
「うん、私達はこの後英語の授業あるから殺せんせー一人でごゆっくりー」
あの巨大なプリンの底には爆弾が仕掛けてある。センサーが反応すればすぐさま起爆。私達は先生が気を取られている内にモニターで確認する
教室の窓の外でうまいうまいと声を上げる先生。あれだけ大きなプリンの形ももう形状が歪み始めているあの様子だと三分もない内に完食しそうだ
「そろそろ爆弾に到達する筈だ」
モニターに面向かって確認する竹林さんが食べ始めてからそう経たない時、呟いた。スイッチを押す権限は彼にある
一体どうなる、と皆つばをゴクリと飲んだ。その時
「止めてええええええええ!」
「ええ!?」
阻止しようとしたのは計画の発案者である茅野さんだった。
「おい寺坂、茅野止めろ!」
「ったく、あのタコ殺す為なんだから我慢しろ!」
寺坂さんに羽交い締めにされてもなお腕をブンブン振り回して声を上げて泣いている
確かに考えてみればそう難しい問題ではなかった。元々彼女は無双のプリン好き、それが故この計画には自分の夢も孕んでいたのだろう。計画もあれだけ練られていた。それが自分の目の前で散り散りになろうというのだから。
うん…それはちょっときついかもね…
そう思った矢先、
「何故だ…」
竹林さんの言葉で再び紡がれた
「もう到達していてもおかしくない筈なのに…反応がない」
「え?」
皆が言った瞬間、教室に風が吹き抜けた。
「ちょっと休憩」
律儀に口を拭いた先生が背後に。そして片手には、
私達の爆弾…!
「食べている途中でプラスチックの匂いを嗅ぎ取ったのでね、土を食べ、先回りして解除しました」
『(パッ〇マンか!!)』
そんな言葉が容易く出てくるのはファミコンゲームの中だけの話だ。そういやティッシュも食べてたな…この人。
「それに、美味しいプリンは皆で食べる物です。まだ汚れていない部分を取ってきました」
机に並べられたのは小さな器に綺麗に並べられた崩れたプリン達。それを見て茅野さんはようやく肩を下した
「失敗した…というか、安心した?」
渚さんが言う言葉が今一番しっくりくる言葉だろう
「でもいつかまたやるよ、殺せんせー!プルンプルンの刃は幾らでも持ってるんだから!」
