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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第30章 それぞれの暗殺の時間


彼は自嘲の笑みを見せて続けた

「できて当たり前の家。それができない僕は家族として扱ってもらえない」

『!!』

背中に激動が奔った。かつての私がそうだったように彼は今この闇に埋もれている



誰も何も言えなくなってしまった


「早稲田さん」

『…?』

「僕は君に憧れていた」

『え?』

「画面の中の君はいつだって笑顔を絶やさない。悩んでいる人がいればそっと寄り添ってくれた。ある意味救世主だったんじゃないか」
『そんな…私は』





「君なら……


この状況をどうにかできるのかな?」



諦め。その感情を残して彼は去ってしまった


渚さんが引き留めようとしたが、神崎さんがその手を止めた

「止めてあげて渚君」

「神崎さん…」

「大人の縛りの鎖って、嫌なところに絡みついてきて離れないの。
だから無理に引っ張らないであげて…」
彼女自身も親からのプレッシャーを重荷に感じていた一人だ。



さっきの言葉…きっとそれに込められた意味は皮肉だろう。それは自分に対してか、はたまた私に対してか…

どちらにしろ彼が言ったことは確かだ。

私はみんなの境遇に同情する。けど、ただそれだけ。


私が実際に彼らを助けた試しはない。加えて私自身は皆に助けてもらってばかりだ。


何か直接的な力になってあげたい。しかし、実際どうすればいいかは分からなかった








翌日、先生にこのことを話してみた

「なるほど、彼もまた親の縛りに苦しめられている訳ですか…」

『はい…』

「しかし怖じ気づくことではありません。そのことを彼自身が自覚しているのならまだ抜け出す見込みはあります。

運営の事は君たちにはできません。ここは先生に任せて下さい」

『……ッ、先生…

私、竹林さんの為に何かしてあげたいです。みんなにこんなに助けて貰いながら、私はみんなの為に何もしてない…

そうじゃないってことを自分で証明したい』


すると、先生は大きな触手の手を私の頭にポンと乗せた


「早稲田さん、

貴方の未練の気持ちは分かります。しかしこの世には適地適作という言葉があります。無理に手を出しても君に危害が及ぶだけです」

『…でも』

「君にしかできないことで充分です。幸いその力を持っている」

『…!』
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