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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第29章 抜けない熱はそのままにして


と、その時、ふと手元に目を落とした


夏休み前、先生から預かった成績表




「早稲田さんは常に冷静な目を持ち、客観的に物事を見ることに優れています。ですが、時々現実過ぎて希望を諦める癖が少々。この夏休みは少し思い切ったことをするとよいでしょう(例えばスパイ大作戦とか)」




『………!』



その言葉に感化され、私はしまってある学校用のシューズを取り出す。汚してしまった服を脱ぎ捨て、動きやすい体育着に着替える。誰も見ていないことを確認し、二階の窓を開けて、屋根に飛び移った。




花火が終わるのは9時。あと15分じゃ間に合う気はしないけど…



それでも私は、その時をみんなと共有したい…!!





『おじさん!椚丘駅まで!』
これが私の最後の夏休み








―――

「渚?どうしたの?」

「いや、…遊夢ちゃん見てないなって…メールでは来るって言ってた筈なんだけど…」

「そういえばそうだね。でも、これだけ人がいるんだし会えなくてもおかしくないと思うけど…もうそろそろ終わりになっちゃうし帰ってるんじゃない?」

「………

それでも、僕は遊夢ちゃんに会いたい」

「…!」

「律、一度遊夢ちゃんに連絡かけてみて。後は皆にも一緒にいる人がいないか探したい」

「了解しました、渚さん!」

―――




「お嬢ちゃん、祭りに行くつもりかい?」
『はい』
「うーん、だとしたらこの渋滞はその間には抜けられないね…そろそろ帰りの車も集まってきているから」

タクシーの運転手が眉をひそめた。いつまでも進む気配がしない鉄の個体達。前方の信号は青な筈なのに…

私は意を決して言った
『…わかりました…ここからは歩いていきます。ありがとうございました』

「あ、ちょっと」


お金を渡し、おつりをもらわないまま私は駅方面へ駆け出した






まだ打ちあがる花火を確認しながら私は足を早める



『(お願い…どうか間に合って…)』






駅前にようやくついた




が花火の雨は止まった



「あー、あれで終わりか」
「楽しかったねー」


ぞろぞろと駅へ流れていく人々。ど真ん中に立つ私をするするとよけながらホームへ向かっていく







ああ、終わったんだな…
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