第28章 夏の匂いが残る頃に
『お邪魔します』
「いらっしゃい、貴方が渚のお友達?清楚でいい子そうじゃない渚」
「もう!僕の友達にちょっかいかけないでよ、母さん!///」
渚さんの家にはお母さんがいた。ショートカットで少し背が高くて働く女性って感じだ。家に誰かを連れてくるのはめったにないのか珍し気に見られてる…
それを恥ずかしげに止める彼
「ごめんね、あんな感じで」
彼の部屋に連れていかれて、小さな机に飲み物を置く渚さん
『いえ、あまり気にしてないです。寧ろ羨ましいっていうか…』
「どういうこと?」
『………私の母はほとんど仕事で…帰ってこないんです。
どちらかというと父と一緒にいる時間が多くて』
できるだけ自然に、吐くように嘘をついた
「そっか…思春期の女の子にはちょっと辛いかもね…」
『ああ、もう!こんな話しても時間が勿体ないですよ!早くやりましょう』
「あ、うん」
渚さんの憐れみの視線にいたたまれなくなって無理矢理話題を変えた。そもそも私は勉強をしに来たんだ、目的は達成しないと…
自分の気持ちでさえ誤魔化して私は急いでノートを開いた
「ふう…かなり進んだかな…」
『けどもうこれ以上は集中続きません…』
窓を見ればもう日も傾いていた
「ちょっと…散歩でもする?」
その間を区切ったのは渚さんだった
「昼間よりも気温は下がってるし、海岸なら少し涼しいと思うよ」
『海岸?海を通る道があるんですか?』
私がそう聞くとにっこりと頷いた
ザザザ
『東京湾って意外と広いんですね』
「うん、沖縄の海の方がずっと綺麗だったけど」
道は知らないので渚さんの後をちょこちょこついて来た私。いつの間にか広い海に出た。観光用の浜辺ではなく、どちらかというと漁船が止まるようなコンクリートで括られた歩きやすい場所だった
『それにしてもどうしてこんな場所知ってるんですか?』
「う…聞く?それ(汗」
『…?ええ。』
「僕…その…す、寿司が好きだから…」
それ以上は何も言わなかったけど、そこまでで大体のことが察することできる
『ふふ…』
「何で笑うの!」
『いや、普通だな、と』
「予想通りの返答しないでよ!!」
久々に彼のツッコミを聞いた気がする