第28章 夏の匂いが残る頃に
「うーん…でも遊夢ちゃんの家ちょっと心配だから…
できる限りの時間、一緒にいられればいいって思ったんだけど…」
『!』
電話越しでも分かる、眉を下げたような声。
本当は嬉しいって言いたい。けど、言っちゃいけないんだ…
『別に家では何もありませんけど、仕方ありませんね…いつもの学校の駅のところで待ち合わせでどうです?』
「うん…それでいいよ」
『じゃあ、また』
「うん、またお盆明けに」
携帯を机に置いた後、私は畳に倒れた
『嬉しい、嬉しいけど…』
通気性のいい部屋でも、今の私の頭の熱を冷ましてくれるものはなかった
『思い出しちゃうよ……///』
沖縄の暗殺夏季課外の最終日、渚さんがやけに真剣そうな顔をして私に聞いて来た
―――
「遊夢ちゃんに、生涯の一部を捧げてもいいような愛する人はいないの?」
―――
あの時、質問に答えるべく、真面目に考えていたけど今思い出すと恥ずかしい!!
何だよ!仮に付き合うならE組の皆がいいって!!
何だその急なデレは!?「粉雪の王女」と呼ばれた私が!?いや、周りが勝手につけたんだけど!!
それと…
壁に私を追い詰める渚さんは……
ちょっと色っぽくてかっこよかったな……なんて…
『うぎゃああああ!!////』
抑えきれない熱を足をバタバタ動かしたりゴロゴロ動き回ったりして飛ばそうとしたが
(ゴツン
『アでッ…』
狭い和室で負傷した。
『お待たせしました』
「あ、遊夢ちゃん!」
予定の日、椚丘駅の正面入り口で彼は待っていた。沖縄の時のような薄いパーカーを着ていた。そういう服が好きなのかな?
「…(じっ」
『え、なに…』
「あ、ううん。夏季課外の時にも私服見たけど可愛いなって思って」
『…///(ボッ』
今日は日差しが強いとのことだからこの間買った白いワンピースで来てみたけど……
渚さんいつからそんな天然タラシになったの!!!!?
『さ、最近買ったものなんでそれでセンス決めつけないで下さい!!』
「あ、そうなの?
それより早く行こう。暑くて溶けちゃうよ」