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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第28章 夏の匂いが残る頃に


僕が初めて話したのは英語の授業。

時々隣になった人とペアワークをする時間があったから、隣になったときはやはり僕もどきまぎしていたのをよく覚えている


『この文訳してきました?』

「あ、うん。えーっと…」

少し身体を近づけると生活感のある柔軟剤の香りがふわりと漂った。その時は流石だとしか思わなかった。





その”流石”は、”やはり僕等のイメージ通りだ”ということ







その日は単純な初めてでしかなかった。進展があったのはその次の時



『あの…』
朝一人で自習をしていると申し訳なさそうな遊夢ちゃんが話しかけて来た。

「え、早稲田さん!?」
『今日の予習忘れてしまって、ノートにとってたりしません?』
「あ、うん」

いそいそと僕のノートを書き写す彼女。今まで隙の無い彼女を見てきた僕等にとってその光景は異様だった


「何かあったの?…」
『昨日習い事の後にやる時間と体力がなくて…』
「珍しい…」

僕が言った独り言はバッチリ彼女に聞こえていた

『私は…完璧なのではありません。

周りが、家族が、そうあるべきって押し付けてるだけです。それで水中で必死に足を動かす白鳥になってる私も私ですけどね』




それが、遊夢ちゃんが他人に初めて教えてくれた本音だった








『ありがとうございました、助かります。
えっと…名前』

「渚。潮田渚」

『潮田さんでしたか。ありがとうございます』
「あ、名前でいいよ」
『何故?』
「あー…なんていうか、好きじゃないんだ。苗字で呼ばれるの」
『…!それは、…考慮に至りませんでした、失礼』
「別にそこまで重くとらえてないよ(汗」


『渚…

髪色が水色だからそう付けられたんでしょうか?』

「ははは…そこまで安直じゃないと思うけど…(案外天然…?)」







遊夢ちゃんはその後、僕に本音をポツリ、ポツリと話してくれる関係になった

『渚さん、返って来たテストどうでしたか?』
「うーん…微妙。早稲田さんは?
わ!91点!?流石だね」
『それなりに努力しましたから…
本当に凄いのは彼ですよ。ああやってのらりくらりしてますけど、本当の努力をしているのは彼だけです』

あの時の遊夢ちゃんはカルマ君に少しジェラシー感じていたっけ
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