第28章 夏の匂いが残る頃に
『あと…』
「?」
『私のことも…名前で呼んで下さい。
私だけ苗字なのは…なんか変です…///』
「そっか、じゃあ
遊夢ちゃん」(ニコッ
初めはこの気持ちが分からなかった
『私はただの親の駒なんです。自分のもう一つの人生みたいに扱って…できなかったことを私にやらせようとするんです。それよりも劣化してしまえば勿論叱られます
私は…ただの私なのに…』
高嶺の花だと思っていたのはただのドライフラワーだった。それはきっと僕等も同じだ
「うん、僕も同じ気持ち」
あの時、みんなと同じ距離で彼女を見つめていたからその気持ちを”憧れ”という風に名付けていた
けど、E組で再会して、闇に呑まれてしまった遊夢ちゃんを見て自覚した
―――
『私は…今はそのような人は具体的には思いつきませんが、本当に付き合うならE組の皆がいいです。
私のことを…拒絶しなかったから…
渚さんはどうなんですか?』
あの時の時間が、遊夢ちゃんが初めて笑ったり、照れたりしていた時間が楽しかった
それを取り戻したいと思った自分は…
それはきっと彼女の為ではなくて自分の為だ
あの心地いい心境をもう一度感じたいと思った僕は…
遊夢ちゃんが好きなんだ。
ずっと傍に置いておきたい存在なんだ。
「僕は………
いるよ。」
暗がりの中、僕の答えに目を見開いた遊夢ちゃんに、僕は微笑んだ