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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第27章 バベルの塔の時間


「あぐッ」

「おらどうした? 殺すんじゃなかったのか」


暫く、渚さんは奴の手捌きに手も足も出なかった。私達よりも経験はずっと上。そして完全警戒態勢のあいつに早々と決着をつけるのはかなり難しい話だ

「へばるなよ、今までのは序の口だぞ」
がくりと膝をついた渚さんに、鷹岡は地面についたナイフをようやく持って笑った。
「さぁて、そろそろ俺もこいつを使うか」

「……!!」


あの時の戦いを彷彿させるシチュエーション。



こいつは本気で倍返しにしてくるつもりだ






「手足切り落として標本にしてやる。ずっと手元に置いて愛でてやるよ」









『………仮にそうなったら次は私があんたを殺す。卑怯だとかそんなのどうでもいい』


私はそう奴に言い放った。どう転んでも、私なりに覚悟を決めた
「ククク、本気で殺しに来るならどいつでも大歓迎だよ」






どうやら彼も同じ気持ちだったようだ











再び立ち上がり、深呼吸をして正面を向く。









その表情は……

笑顔だった







『…!』
私の脳裏にさらに色濃く蘇る、あの時の一戦。しかし、またどこか違う、と思った理由はあの瞬間には分からなかった



奴の苦い記憶が呼び戻されたのか、歯ぎしりを鳴らして睨みつけた
「くっそガキィ〜…」

ギラリと光る眼はナイフに向かっている



優しく微笑んだまま、距離をじわじわと詰めてくる






そしてあと1メートルと言う所で、






ナイフを手首のスナップを効かせて投げ捨て、息をする間も与えず



奴の目の前で一発手を合わせた




パン!という乾いた音が屋上に響く








その音、その衝撃だけで奴の肉体は硬直した
「な、にが、起、こっ」



その隙を逃さず、ポケットからスタンガンを取り出す。


開けた脇にしっかりと当てた




「ぎッ」




そのままドサリと膝から崩れる


『猫だまし…』

そこまでになって何が起こったのかようやく気が付いた。普通相撲などで使われる技だが、ここまで殺気のあるものに変貌したのは初めて見た。


まさか、ロヴロさんが教えてくれたっていう必殺技って……




「…とどめ刺せ、渚。首あたりにたっぷり流しゃ気絶する」

下で寺坂さんが小さく呟いた
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