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私が嫌いな私なんて〇したっていいじゃないか

第27章 バベルの塔の時間


「そんなクズでも息の根止めりゃ殺人罪だ。テメーはキレるに任せて百億のチャンス手放すのか?」

「寺坂君の言う通りです渚君。その男を殺しても何の価値もないし、逆上しても不利になるだけ。そもそも彼に治療薬に関する知識など無い。下にいた毒使いの男に聞きましょう。こんな男は気絶程度で充分です」

淡々と助言をする寺坂さんと先生。しかしこれら全ては事実だ。上手くいかなければ殺されるし、上手くいってしまえば殺人鬼になる。ある意味どちらもあいつの思うツボと言う所だ。

前に赤羽さんにも同じことを言われた気がする



「おいおい余計な水差すんじゃねェ。本気で殺しに来させなきゃ意味無ぇんだ。このチビの本気の殺意を屈辱的に返り討ちにして…はじめて俺の恥は消し去れる」

「渚君、寺坂君のスタンガンを拾いなさい」

鷹岡の言葉も先生は無視し、いつものように渚さんに優しく話しかける


「その男の命と先生の命、その男の言葉と寺坂君の言葉。それぞれどちらに価値があるのか考えるんです」

渚さんがスタンガンとナイフを交互に見つめた時、下でドサリと重い音がした

「寺坂!!」

「おまえコレ熱やべぇぞ!!」

「こんな状態で来てたのかよ!!」

心配するみんなをよそに、寺坂さんは赤い顔で、震える指でヘリポートのデッキを指す
「うるせえ…見るならあっちだ」





「…やれ、渚。死なねぇ範囲で、ブッ殺せ」




寺坂さんの言葉と同時にざわりと吹く風。


渚さんは静かにスタンガンをポケットにしまい、実用ナイフを向けた

『渚さん…』

私の言葉に反応せず、静かに前を見つめる彼。ただ、私にはわかった。目が、さっきとは違うことに

「お〜お〜カッコいいねぇ」

それを見た目で判断する鷹岡。変化には気づいていないようだ
「ナイフ使う気満々だな。安心したぜ。スタンガンはお友達に義理立てして拾ってやったというとこか。
一応言っとくが、薬はここに3回分ほど予備がある」
と言ってポケットからガラス瓶を取り出した。中の液体がちゃぷんと揺れる


「渚クンが本気で殺しに来なかったり下の奴等が俺の邪魔をしようものなら、こいつも破壊する。作るのに1ヶ月はかかるそうだ。人数分には足りないが最後の希望だぜ?」


『…』

私は渚さんを信じてこの決闘の行く先を見届けた
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