第27章 バベルの塔の時間
「挙句の果てにはそれが自分のテリトリーだとか言い出して…!
ふざけるなよ!!!!!!」
『…』
もう…何も言えなくなった。
耐える力はみんなの何かに役に立つと思っていた。物理的に危険になったときに、みんなを庇えるから。
けど、その考えそのものが間違っている。
彼がそう言うのは私を大事な一部と思ってくれているから。
守るために耐える私と、目的のために言いなりになる君。
そんなの…
お互い様じゃないか…
『貴方の判断には呆れましたッ…』
「…!」
泣きたくなるのをぐっとこらえて渚さんに最後の一言を放った。その涙は現状への絶望なのか私を叱ってくれた歓喜なのか、それはもはや分からない
「…よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ。褒美にいい事を教えてやろう」
いつの間にか鷹岡は一人で納得し、振り返ってアタッシュケースを取りに戻った
「あのウィルスで死んだ奴がどうなるか、"スモッグ"の奴に画像を見せてもらったんだが、笑えるぜ。全身デキモノだらけ。顔面がブドウみたいに腫れ上がってな」
アタッシュケースを持ち上げ、余裕の笑みでボタンを顔の横に近づける鷹岡。次の瞬間私は暗闇に落とされた
「見たいだろ? 渚君」
アタッシュケースを放り投げそれにスイッチを向けた
「やッ、やめろーッ!!」
烏丸先生の悲痛な叫び声は届くことなく、
容器は爆破された
スローモーションのように見えた。その残酷な映像を至近距離で見ていたのは…私と渚さんだけ
残骸が、破片が宙に飛び散る様はまるで火山の噴火を彷彿とさせる
「あはははははははは!! そう!! その顔が見たかった!!」
そうだ、こいつに交渉なんてしようと思った自分がバカだった
奴の言葉ももうほとんど入らない。
と言うかどうでもよかった。
「夏休みの観察日記にしたらどうだ? お友達の顔面がブドウみたいに化けてく様をよ、ははははははは」
灰のような白くてさらさらした絶望は、次第に、赤く、黒く全身を染めていく。
腹から煮えたぎる怒りは、熱は、もはや留まることを知らなかった
なんで生きてるの?お前に生きる価値なんてあるの?
さっさと地獄に落ちてくれ