第27章 バベルの塔の時間
「あんたが何を隠しているのかは今は探らないでおくわ。けどこれだけは言っておく、これ以上ブサメンに襲われたくなかったらSに立ちなさい」
『えす?赤羽さんみたいになれってことですか?』
「あそこまで酷くはないわよ。ただ、世の中にはそれを好む人が一定数いるから需要はあるってこと。逆に回心させることもできるし。
どうせ襲われるなら人は選びたいでしょ?なら自分が上の立場にならないとその主導権すら握らせてもらえない。
私も色んなとこ見てきたけど、女と男が真の平等である国なんて何処を探してもないわ。女は下に、弱い存在に見られる」
『イリーナ先生はSなんですか?初日あんなに先生に媚びてたのに?』
「だまらっしゃい」
「まあ、とにかくあんたには私が手に入れたSとしてのテクを教えてあげる。それは自分を守る護身術にもなる。
いつだって女は上に立たなきゃ」
―――
イリーナ先生が教えてくれた社会の事実。絶望するような現状だったけど、まずは私自身を守らなきゃ戦えない。
それを教えてくれたってことを知っているのは私だけで良い
「この潜入も終盤だ。律」
「はい、ここからはVIPフロアです」
VIPフロア……それなら警備もかなり厳重な筈
「ホテルの者だけに警備を任せず、客が個人で雇った見張りを置ける…それがこのフロアの利点です」
「そんで早速上への階段に見張りか、超強そう…」
壁を背中に菅谷さんが向こうの様子を確認する。明らかにホテルの従業員でない、頑丈そうなガードマンが2人いた
「私達を脅してる奴の一味なの? それとも無関係の人が雇った警備?」
「どっちでもいーわ、倒さなきゃ通れねーのは一緒だろうが」
寺坂さんが静かに腕を鳴らす
「その通り、寺坂君。そして倒すには、君が持ってる武器などが最適ですねぇ」
武器? と周りがぽかんとする中
「…ケッ、透視能力でもあんのか、テメーは」
呆れたように話す寺坂さん
「…出来るのか? 一瞬で2人共仕留めないと連絡されるぞ」
「任せてくれって……おい木村」
指で木村さんを寄せてざっくりした作戦を話した
「テメー1人ならすぐに敵とは思われねーだろ。あいつらをちょっとここまで誘い出して来い」
「俺がァ? どーやって?」
「知らねーよ、なんか怒らせる事言えばいい」
急にそんなことを依頼されて眉を顰める木村さん
