第27章 バベルの塔の時間
「よせ無謀…」
「ストップです烏間先生」
私が言いたかったことを烏丸先生は言おうとしたが、先生に制止された
「アゴが引けている」
「…!?」
つまり、正面から相手を見ているということ。
「………いいだろう、試してやるぬ」
上着を脱ぎだした男。本気だ…
赤羽さんは手頃な長い木の棒を持ってニヤリと笑い、相手に仕掛けて行った。
赤羽さんが降り下ろした棒は呆気なく止められ、素手で折られる
「柔い。もっと良い武器を探すべきだぬ」
「必要ないね」
木を手放し、突進してくる男をサラリと躱す
「お…」
「おお……」
30秒ぐらいだっただろうか。私達は二人の攻防をぽかんとみているだけだった。男が繰り出してくる早業に赤羽さんは拳に当たらない絶妙なラインでよけ続けている
「すごい…全部避けるか捌いてる」
「烏間先生の防御テクニック、ですねぇ」
『え、烏丸先生から教えてもらったんですか?』
「いやいや、公の場で真面目に学ぶのは彼の性に合いませんよ。きっと授業の間で盗んだのでしょう。彼の技を」
赤羽さんはただでさえ体育の授業をサボることだってある。だったら尚更…あの短期間で動きの癖や使える技をコピーしたということ。
普通の授業だったら…分からない。みんなの才能…
「…どうした? 攻撃しなくては永久にここを抜けれぬぞ」
攻防の中で男も負けじと挑発してくる。そうだ、ここを切り抜くか倒すかしない限り…
「どうかな〜、あんたを引きつけるだけ引きつけといて、そのスキに皆がちょっとずつ抜けるってのもアリかと思って」
『!!』
男が一瞬こちらに視線を飛ばした。勿論これもカマかけだろう。隙と動揺を生み出す
「…安心しなよ、そんなコスい事は無しだ。今度は俺から行くからさ」
赤羽さんも手を鳴らし、構え直す。
「あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着つけるよ」
「良い顔だぬ、少年戦士よ。おまえとならやれそうぬ。暗殺稼業では味わえない、フェアな闘いが」
一歩を蹴り出した赤羽さんは飛び蹴りをお見舞いするがすぐに止められる。しかしその瞬間、態勢を立て直し男のすねを蹴る
「くっ…」
男は膝を付き隙ができた。赤羽さんは男の背中へ向かって駆け出す。
入った…!
そう判断するには早すぎた。赤羽さんはそのまま攻撃できずに重力に沿って崩れ落ちてしまった
『赤羽さん!!』
