第23章 水遊びは波乱の時間
「ちょっと泳げてもう充分だと思ったんでしょうね、もともと反復練習とか大嫌いな子だったし。
…で、案の定。海流に流されて溺れちゃって救助沙汰に。
…それ以来ずっとあの調子。『死にかけて大恥かいてトラウマだ』『役に立たない泳ぎを教えた償いをしろ』って。
テストのたびにつきっきりで勉強教えている間に…私の方が苦手科目こじらせちゃってE組行きよ」
『それって完全に逆恨みじゃないですか。聞いてるこっちが恥ずかしくなりますよ』
それに、私はその”呪い”の言葉が嫌いだ
「そんな…彼女ちょっと片岡さんに甘えすぎじゃ?」
「いいよ、こういうのは慣れっこだから」
困ったように笑う彼女に何て声をかけたらいいのか私達は困ってしまった。
すると、後ろで軽くピッと笛の音が鳴る。
振り向けばプールの時間と同じ格好をした先生が
「いけません片岡さん。しがみつかれる事に慣れてしまうと…いつか一緒に溺れてしまいますよ
例えばこんな風に―――
とマッハで即興の紙芝居を作る先生。題は「主婦の憂鬱」
「『ちょっとあんた、今月の家賃をどうするつもり!?』
『うるせーなパチスロだよパチスロ!!』
ひげを生やし、『屑』と書かれた帽子を被った夫は乱暴に妻の手を振り払う。
『ジャマすんなどけ!!』
『きゃっ!!』
夫の手はそのまま妻の頬へと向かった。
時が経ち、数時間後。
『…ごめんな、家賃がチョコ一枚になっちまった』
暗い畳の部屋で座り込む妻。
『見捨てないでくれよぉ…俺、おまえがいてくれないと何にもできない奴なんだよ…』
妻に抱きつく夫。
『……もうっ、ほんとダメな人なんだから…♡』
妻は夫に優しく微笑みかけた……。
夫役・殺せんせー 妻役・片岡メグ 紙芝居作成・殺せんせー」
「「『重ッ!!』」」
「いわゆる共依存というやつです。あなた自身も依存される事に依存してしまうのです。
片岡さん、あなたの面倒見や責任感は本当に素晴らしい。
ですが、時には相手の自立心を育てる事も必要です。
『こいつならどんなにしがみついても沈まない』。そう思うと人は自力で泳ぐ事をやめてしまう。それは彼女のためにもなりません」
『そうですよ。片岡さんの立派な力をタダで利用しようとする奴は私が許しません!』
「早稲田さん…
殺せんせー…私どうしたらいいかな?」