第21章 ただいまの時間
電車で30分程離れた場所
『わあ…』
「凄いでしょ?」
手入れされてる綺麗な庭と沢山の噴水。中には水遊びをする子供たちもいた
『近場にこんな場所があったなんて…確かに夏にはうれしいです』
「僕も。自分の住んでる近くなのに調べるまで気が付かなかった。
本当に大事なものって見えないって本当なのかな…」
『…そうかもしれませんね。
えいっ!』(パシャッ
「うえぁ!!ちょ、やめてよー!!」
『ははは!』
その日は珍しく子供のように遊んだり走り回ったりした。童心に帰った気がして楽しかったし、いっぱい笑った
『はー…これ明日筋肉痛になるな…』
「そろそろ学校戻るんだから基礎体力は取り戻しておいてよw
あ、そうだ帰りに何か買っていこうよ。何が食べたい?」
『うーん、クレープ』
そんな話をしながら帰りの電車に揺られていた時だった。同じ車両に子連れの母がいたのだろうか、生まれたばかりの赤ちゃんの泣き声がする。乗客の視線が一斉にその人へ刺さった
「おい、親なんだから子供くらい静かにさせろよ。みんな迷惑してるのがわかんないのか?」
「すみません、すみません…」
そう罵倒したのは知らない中年のサラリーマンだったけど、周りの皆も同じ意の視線を彼女に向けている。
まるで学校での私達だ…
感じ悪…
「…遊夢ちゃん?」
私は必死でわが子をあやす母親に歩み寄り、微笑みながら話かけた
『元気な子ですね。今幾つなんですか?』
「え?……あ…まだ1歳もしてなくて…」
『そうなんですか。大変でしょう、まだ生まれたばかりの子を電車に乗せるのは』
「…!」
私はその子に歌をプレゼントした。この人たちなら、私の歌を聞かせる価値がある。そうその時に直観したから…
その車両の中だけに響く私の歌
歌い終われば、その子は泣き止んでいた。黒くて真ん丸な瞳がじっと私を見つめていた
『ふふ、驚かせちゃってごめんねー』
母親に会釈をして渚さんの元へ戻って行った