第20章 おかえりの時間
『今日はみんな忙しいのに来てくれてありがとう!最高のショーにするから期待してて!!』
皆異変にすぐ気づいた。
遊夢ちゃんがいつも浮かべないような貼り付けの笑顔。みんなを楽しませてくれるような明るい声調。少し低いアルトボイス。
全てが僕らの遊夢ちゃんになかったもの達…
僕らは一種の恐怖を覚えた
「早稲田さん?早稲田さんじゃないの?」
『だから~私はMineだってば』
ニコニコと表情を変えないまま話を続ける遊夢ちゃん。もはや会話をするにも拳に汗が滲む。
確かに声は携帯で何べんも聞いたあの声。それによく見えると、その衣装は単独ライブに着ていたものと全く同じ
この人は…遊夢ちゃんじゃない…のか…?
「Mineさん、こちらこそ本日はお招きいただきありがとうございます」
それを見かねた殺せんせーが落ち着いて遊夢ちゃんと交渉にしかけた
一体何が起こっているのか…僕らには何も分からない
「それで、貴方にいくつかお聞きしたいことがあるんですが」
『いいよー。個人的な話だけど今すこぶる機嫌がいいんだー!凄く気持ちがいいの!
今なら少しゴシップっぽい質問でも許しちゃうかも☆』
「では……
遊夢さんは、今どこにいるんですか?」
先生の威圧する声に反応したのか、遊夢ちゃんが目を見開く。
そして嘲笑うような顔をして答える
『ああ、遊夢?あの子ならもうとっくに死んでるんじゃない?
誰からも必要とされてなかったみたいだし』
「(どういうこと…?じゃあ、僕等が見ている遊夢ちゃんは一体何なんだ…?)」
闇の池に一人沈みかけているところを奥田さんの声で助けられた
「そっ、そんなことないです!みんな早稲田さんを必要としてます!」
『うーん、そうかもしれないね!
けど、あの子はどうかな?』
「!!」
『私は遊夢じゃないから知らないけどさー、彼女本人が必要だって感じてないから死んだんじゃない?
きっとみんなと話す時、どこか壁があったでしょ?』