第19章 モザイクの時間
学校に行かなくなった分、勿論自習はするけどある程度自分の時間を持てるようになった。
住所を知っているのは先生だけ。だから人が直接私の家に来ないし先生も国家秘密だから郵便ポストにプリントなどを突っ込んでいるよう。これなら父に学校に行っていないことがばれない
プリント類の裏には赤ペンで「まだ先生を殺せる人はいなさそうです」とメッセージとタコのイラストが相変わらずそういう所はおせっかいだなぁ…
と、その時電話が鳴る
「もしもし?今開いてる?」
『あ、平居さん』
「ちょっと大事な話があるんだけど…オフィスの近くのカフェに来れない?」
『…はい、30分あれば確実に』
事務所に所属しているのも内密だ。そしてマネージャーの平居さんは私の素顔を知っている数少ない人の一人だ。事務所からの連絡と言うことで恐らく仕事だろうが、私にとっては個人活動以外で何か仕事がもらえるのは嬉しい
だって、私は…Mineはみんなから必要とされているから!
私は浮足立つ心地でカフェに向かった
『え…また…ライブできるんですか…?』
「ええ。この間のが評判よくてねぇ…次はもっと大きいところで出来るし、お客も1.5倍に入れられるわ」
『本当ですか!』
「ただ、もう少しカバー曲じゃなくてオリジナル曲が欲しいってことだから、曲も覚えなきゃだし、振り付けももうちょっとハードになるわよ?
それでもやる気ある?」
『あります!』
「そう、そう言ってくれると思ったわ。じゃあ、これがスケジュールね。基本スタジオに入るのは自由だけど最低でもこの日は来て欲しいわね。ボイスとダンスチェックしたいから。まあ、貴方は学習が早いから大して問題なさそうね。あ、あと振り付けの見本は今回もメールで動画として送るから、貴方の事情も踏まえてね。詳しいメモとかノートが欲しいなら直接来て頂戴」
『恩に着ります…』
カフェを出ると清々しい風が吹いた
やっぱり…私はMineの時の自分が好きだ。みんなから認められる、必要とされる。
誰にも邪魔されない、縛られない
『これなら今日はあの親父の怒号にも耐えられそう!』
いつもならあんな奴のために買い出しに行くことが重々しかったけど、今なら苦しまずに行けそうだ
だが、その時に私を歌姫Mineから奴隷の遊夢に引き戻された