第3章 3
こんなに恥ずかしい経験は初めてだった。
お嬢様にとって川島が最初の男性というわけではない。
それでも、これほどまで羞恥と快感が入り乱れたことはなかった。
愛する男の目の前であられもなく脚を開いている……だけならまだしも、今日はシャワーも浴びていない身体なのだ。
どこか異様な目をした川島に責められつづけて、身体の内がわで稲妻のようなするどい電流が何度も走った。
そして、お嬢様は川島と肌を重ねているとき稀に起こる、ある感覚に襲われた。
膣(なか)で一番気持ちのいいところを、何度も何度も突かれるとそうなった。
快感がこれ以上ないほど飽和状態になり、決壊すると内から何かが溢れ出ていく。
川島が、なかに入ったままの時ならばよかった。
ふたりで一緒に気持ちよくなっていたから。
けれど今回は違う。一方的に快楽を与えられている。
ひとりだけ恥ずかしい格好にさせられている。
そんな状態で溢れ出てしまったら……。
想いとは逆に身体は何かを解放したがっている。
お嬢様は理性と本能の境界線でさまよっていた。
「川島、ッ川島!…、ぁ、ん…ダメっ。おかしい、から……っ」
「お嬢様…、大丈夫です……んッ」
「ちが……っあ、はぁ…出ちゃうの……出ちゃう、からぁ…!」
素直に伝えても川島の舌はとまらなかった。
むしろ掻き立てるようにますます激しく責められ、結局いきおいよく出してしまった。
それを、どこか神妙な表情で顔中に浴びている川島を見て、恥ずかしさを通りこした何とも言えない支配欲、独占欲が満ち足りていくのを感じた。
世の中には、自分の精液を相手の顔にかけたがる男性が存在する。
もしかすると同じような気持ちなのかもしれない。
川島が、すっきりとした顎から滴る水を手で拭い、そのまま顔や髪に塗りたくった。
「はぁ……、はぁっ。お嬢様……」
神の啓示を受け悦びにふるえる信者のような、恍惚とした表情で一心に肌に擦りこんでいた。
お嬢様は見てはいけない川島の姿を見てしまった気がして、いたたまれなくなった。
嬉しいけれど少し怖かった。
これ以上のことを要求されたら、どうなるのだろうという不安。