第8章 いつだって真剣勝負でしょ!
ゾクッ
身震いする。
口角が徐々に上がっていくのが自分でわかる。
成長した。
強くなった。
テツヤくんも、前は軌道を変えるだけしか出来なかったのに、今はボールを更に加速させてる。
大我くんもあの公園の時より全然良い動きしてる。
テツヤくんが彼の能力を最大限にまで引き出しているのかもしれない。
他の選手たちだってかなりの強者だ。
私は黙ってその場を立ち、走って体育館から飛び出した。
こんな、
こんなプレー見せられて
ただ傍観してるなんて、私には無理。
海常高校を出て、服屋を探す。
早く 早く 早く
バスケがしたい!!
見つけた庶民派の店で適当に動きやすそうな服を選び、試着室で着る。
その格好のままレジへ行き、
「この服ください」
財布から一万円を取り出した。
ついでにレジの近くにあったシンプルな黒のゴムも店員に見せる。
本来なら全部で五千円もしないけど
「お釣りはいりません!」
そう言って、呆然とした店内から抜け出した。
…ふふっ
一度でいいから言ってみたかったんだよね
「お釣りはいりません!」って。
買った上下のスウェットは小柄な私には少し大きいけど、さっきまで着てたワンピースよりはずっと動きやすい。
さてと……
私は長い髪を手櫛でまとめ、ゴムで結んだ。
クローバーの髪止めを外して、またしっかりとつけ直す。
この髪止め、実はキセキのみんなから誕生日の時に貰ったものだったりする。
どんな時だって肌身離さず身に付けてた。
まぁ、なんで六葉なのか気になる所ではあるけどね。