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山鳥と雛鳥

第9章 大きく羽ばたくまで


秋が終わりを迎え、北風が冬を知らせる。
そろそろ炬燵の時期かと思っていた時の話。

「ハムちゃん!ご飯だよ?」

雛鳥の声に反応して子鼠がもぞもぞと顔を出す。
手のひらに乗せてる餌を取りに、雛鳥の手に乗る。

「……はむちゃん?」

雛鳥が戸惑う声がしたので、近づいてみた。

「さんちょうもう…なんかはむちゃん、餌食べないんだけど。」

「……。」

手のひらに乗ってちょこちょこ動くが、餌を持っては落としている。
口に入れられることもあるが、普段より少ない。

「病気?」

「いや…雛鳥…。自然の摂理だ。」

首を傾げ、心配そうに見つめる。

「今日は子鼠といっぱい遊んであげなさい。
優しく撫でてやるのもいい。」

雛鳥はそっかと呟き部屋で子鼠を自由に遊ばせた。
ちょこちょこ動いては止まり、また別の方向に向かう。

そこら辺の行動は変わってないが、少し鈍い気もした。
しばらくすると、雛鳥がそっと持ち上げる。

「…?はむ…ちゃん?」

「どうしたんだい?」

「はむちゃん、なんか冷たい。」

いよいよか、と私は覚悟した。

「雛鳥…。子鼠をどうか、そのまま抱き上げてあげなさい。
いいかい?」

私の目を見て、頷く。

「それ…って、お別れってこと?
まだ死なないよね!!」

「………雛鳥。子鼠はその天寿を全うした。」

雛鳥の唇が震える。

「わ、分かんない。
さんちょうもうが何言ってるか分からないよ。」

うるうると瞳が揺れる。
雛鳥の肩を優しく抱きしめることしか出来ない。
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