第8章 それが初恋というのか
実に雛鳥らしく可愛いらしい。
「あぁ、とてもよく似合ってる。
様々か色があると聞いたが、赤でよかったのかい?」
私が訊ねると、小鳥はニヤニヤと笑いだした。
「うん、赤がいいの!
赤はみんなを引っ張っていけるリーダーの色で
ヒーローの色なんだよ!あとね…。」
雛鳥はなぜか急に下を向いてモジモジとしだす。
「……?どうしたんだい?」
「あとね…うふふ!
あ!パパ、絶対に言わないでよ!」
照れたように顔を赤らめ小鳥の後ろに隠れた。
「なんだよ、それなら自分で言えばいいじゃねぇか。」
「だってはずかしいから…。」
小鳥は呆れたようにため息をついた。
私はふと、考え事をする。
『赤はさんちょうもうのおめめの色』
シマエナガの根付けでの会話をふと思い出した。
「私の自意識でなければいいんだが、もしかして私の目の色が赤いからかな?」
小鳥の肩から顔を覗かせ、その顔はさらに赤くなった。
「…そぅ。」
その一言を発するとひゅっと小鳥の背中にまた隠れてしまった。
「……お頭のこと、よっぽど好きなんだにゃ」
子猫がポツリと呟いたのが聞こえたのか、雛鳥が「そんなふうに言うならなんせん、きらいになる」と一瞥した。
「赤はかっこいいヒーローの色でリーダーの色。
好きな男の目の色か…
父親とは言え妬けるねぇ。刀解したくなるな。」
「小鳥、冗談はよしてくれないか…私もその…
ちょっと…。」
小鳥はいつもの豪快な笑みではなく、優しい父親の笑顔をしていた。
「分かってるさ。お前もここまで気に入られて戸惑ってるんだろ?
でも、それはイヤなものか?」
私はそっぽを向いた。
「嫌なわけがない。光栄だよ…とても…。
だが……。」
私が俯くと、小鳥は遊んで来なさいと雛鳥を部屋から移動させた。
「だが?」
「応えられない…」
「どういう意味でだ?
主の娘だからか?」
「いや、そうでは無い…。」
何も言えない私に小鳥は真っ直ぐ私を見据える。
「あいつが気に入ってる。それだけの事だ。
いつか、男も出来りゃその荷も軽くなるだろう。
あいつからしたら、これから長い人生、ほんの一時の付き合いだ。守ってやれよ。」
私は一礼をして、小鳥の言葉に返事をした。
できることなら、この命に代えても雛鳥をずっと守りたい。その言葉を感じつつ、胸の奥底に入れた。