第8章 それが初恋というのか
幾分月日が過ぎただろうか…。
今日は雛鳥が来年、小学生に上がるということでランドセルという教材を持ち運びするための鞄を選びに行っていた。
「娘さんも、もうそんなに大きくなったんですね…。」
堀川が庭の手入れをしながらしみじみと本音を漏らす。
小学校に上がったら学業や交友も幅が広がり忙しくなり、今以上にこちらに来ることは減るだろうと小鳥が寂しそうにしていたのを思い出す。
「あぁ…静かになるだろうな。」
私たちは付喪神ゆえ、歳を取らない。
だからこそ日々、成長する雛鳥との交流はとても刺激的で戦で疲弊した心身に癒しを与えてくれた。
「黄色い帽子を被って、体より大きなランドセルを背負って。」
堀川が寂しそうにするので私も考えるとこはあったりする。
「堀川よ、何も今生の別れではないのだ。
毎日来ていたのが、毎週に減り毎月1回。
会おうと思えば会えるはずだろう?」
堀川は困り眉に笑った。
「そうですね。あ、山鳥毛さん。あれ!巣ができてたんですね。」
堀川が指をさした先には木の上にツバメの巣があった。
「あぁ、本当だ。じきに雛鳥も見えるようになるのだろう。」
こちらからはオスの燕が飛び回り餌を持っては巣にいる番にあげていた。