第3章 自分の娘のような
3歳ともなると、舌足らずも減りますますお喋りになっていく。
それと同時にますます、色んなことに興味を持つようになっていた。
自己表現も豊かになり最近は
「大きくなったらパパのお嫁さんになるの!」
なんて言って回る始末だ。
「ごこた〜!いちに!こっちきて!これなぁに?」
「これは、てんとう虫ですね。
ほら、背中が赤くてんてんがありますよ。」
「いちにぃ、こっちにもてんとう虫がいましたよ。」
そして、最近雛鳥の相手は五虎退と一期一振がよくやっていた。
一期一振は昔から面倒見が良く、五虎退とは気が合うらしい。
正直に言うとちょっと寂しい気もする。
「娘を取られた父親…みたいな、顔をしてるぞ。」
小鳥が縁側で彼らを見守る私に笑いかけながら隣に座った。
「まさか。」
「人間の子も鳥の雛鳥も成長は早いからな。
お前らが何百年、何千年と生きているなら尚更早く感じるだろうよ。」
昼間から小鳥は上物の酒瓶を開けた。
そして盃の1つを私に渡す。
黙って渡すということは付き合えという合図だ。
「分かってるさ。
いずれ、巣立ちの時は来る。」
「しかし、雛鳥は小鳥と結婚すると?」
「ハハハ、まさかな。
まだ言ってもらえるだけありがてぇ時期だ。
あと10年すりゃ、パパなんか嫌い!あっち行って!
とか言い出すぞ〜。
その時期にアイツに惚れた、コイツに惚れた。
惚れた腫れた振られた泣いた。」
小鳥はそれすらも楽しみだと思ったような口調だった。
「随分楽しみにしてるんだな。」
1口クイッと酒をいただく。
キリッと鋭い旨みが上物だとよく分かる。
「当たりめぇよ。連れてくる男がどんなやつか。
俺みたいなやつになるのか堅実なやつになるのか
クズか…いや、クズは困るな。」
私は小鳥の独り言にも近い言葉に笑みをこぼした。
そう考えると確かに、楽しみになる。
「パパ〜!さんちょーもー!見て!いちにとごこたが取ってくれた!
てんとう虫って言うんだって!」
雛鳥は嬉しそうにてんとう虫を見せてきた。
「おや、これは立派なてんとう虫だな。」
2匹のてんとう虫が雛鳥の小さな手の上をちょろちょろと動いている。