第12章 君を想うがため
結局、私の中学生生活はなんの色恋沙汰もなく終わっていく。
大人びた子は惚れた腫れたの話をしてたり、馬鹿な男子は覚えたてのそういう言葉を吐いていて気持ち悪くすら感じていた。
受験も終わり、残るは期末テスト。
山鳥毛から貰ってるお香を立てて勉強に励んでいると、それが最後のお香だと気づいた。
学校も休みのその日。
私は、お香をもらいに山鳥毛の部屋に訪ねた。
「山鳥毛、お香貰ってもいい?」
「雛鳥か、久しいな。あぁ、あるからいいよ。」
「うん。ありがとう。」
「どうだい?学業の方は。」
「まぁまぁかな?山鳥毛もどう?変わりは。」
「相変わらずだよ。」
ここ最近、山鳥毛とは距離を感じていた。
それは、何故か分からない。
でも、このお香のやり取りがある時は山鳥毛も対応してくれる。
「雛鳥、すまないが…それが最後の香になりそうだ。」
「え、そうなの?」
「あぁ。」
理由は怖くて聞けなかった。
もちろん、山鳥毛は大人だから本音も言わない。
「そっ…か。」
山鳥毛にどんな顔をすればいいか分からないけど、私は寂しく感じていたのは間違いない。
「じゃ、じゃあさ!お詫びに抱っこしてよ!
ほら昔みたいにギュッて。」
山鳥毛は、悲しげに笑った。
「雛鳥、それももう出来ない。」
「え、なんで…」
「雛鳥、君は気づいているかい?
少しずつ立派な女性になっているんだ。
私のような者が軽率に抱きしめていいわけではない。
君が心を許せる者にしてもらいなさい。」
拒絶された。