第10章 その香りが思い出となる
私が小鳥に頼まれて人里で買い物をしていた時の話。
買い物を済ませ帰ろうと思ったが、安らぎのある香りが鼻をくすぐった。
「お香か…久しく、使ってないな。」
赤子だった雛鳥に、火の元は危ない。
どんなに手の届かぬ場所でも、どんなに火元が小さかろうと小鳥は頭を下げてまで火の元から遠ざけて欲しいと言っていた。
お香は雛鳥が生まれて少ししたら使い切ってしまい、それ以降利用していなかった。
お香には浄化作用や殺菌作用もあると言われている。
「ふむ…またしばらく、雛鳥は来ないだろうし香を楽しもうかな。」
香典屋に入り、幾つもある香典から良い物を選ぶ。
物書き、読書をしている時や寝る前にでも焚いてみよう。
「これを3箱ほどいただきたい。」
「はいよ〜。」
こうして、私は久しぶりに香を楽しむことにした。