第5章 交差
本当はこのままみなみの隣で朝を迎えたいが、今日の所は我慢をしよう。
変装が崩れていたら大変だからな。俺の正体を見破る事が出来れば
こいつと朝まで…いや、俺の横に置いておけるのだが。
自ら言う事も出来ず、勘づいたみなみの言葉を待つのみ
今は早く気付けと言う願望すら出てきている。
工藤さんとボウヤが了承すれば今すぐにでもこのホテルから連れ去りたかった
監視目的だった筈がいつの間にか…
俺を誘うみなみの瞳も体も、どうやら俺を掴んで離さない様だ。
認めたくは無いが、俺がまた誰かに恋慕する時が来るとはな。
散らばったテーブル周りを元に戻し、眠っているみなみを見ながら煙を吐き出し終える。
みなみのバッグからスマホを取り出すと案の定、降谷君からメッセージが三時間程前に届いていた。
全く。俺達は三時間近くこんな事をしていたのか。
“みなみさん、今日はありがとうございました”
“無事に部屋には着きましたか?心配なので返信くださいね?”
“また二人で会いましょうね、おやすみなさい”
降谷君も熱心だな。俺からみなみを遠ざけたとして、君はその後どうするつもりだ?
彼の女事情は知らんが、あまりうちの要人を揶揄わないで貰いたい。
こんな複雑な思いを抱えながら、気持ち良さそうに眠っているみなみの顔を見ると先程までの事が蘇るな。
いや、お前も何かあるのか?何故、どうして突然この世界に?
にしてもそんな映画の様な事があるとはな。
突然消えてしまうのでは無いのか、不安な所はあるが。
みなみの額に静かにキスを落とし、カーテンをしっかり閉め
部屋を後にした。