第5章 交差
『安室…さん?』
背後から私を包む安室さんの腕は少し震えていて。
何か過去の事を思い出してしまったのかな…
安室さんの詳しい過去までは分からないから何も言えないのがもどかしい。
「零で良い、もう僕の事を知っているんだから…」
『零…?』
「ああ、そうさ。」
少し強気だった筈の安室さ…零の見せる姿はどこか愛おしさを感じてしまって。
髪を左側にまとめ寄せ、私の首に顔を埋めている零の名前をもう一度呼べば
顔を上げた零とまた唇が重なり、直ぐに湿ったキスへと変わると一旦唇が離れて
「それじゃ体勢がきついだろ?」
眉を下げでそう言いながら、少し笑う零に安心していると
そのまま横抱きにされベッドのへ。
何も言葉を発する事無く、ベッドの上でまた深く唇を重ね合わせると
零のヌルッとした舌が口内へ入ってきて
こんな時なのに思い出すのは沖矢さんとのキスの事で…
彼が恋しい筈なのに、今は私の背中と頬に添えられた零の大きくて温かい手が
心地好くて。蕩けそうで、今すぐにでも零が欲しくて。
お互いを求める様に舌を絡み合わせていると、背中のファスナーに零の手が伸び、腰まで下ろされるとまた唇が離れ
露わになる赤いレースのランジェリーを纏った
白くて豊満な美しいみなみさんの姿。
「綺麗だ」
その赤い色にすら憤る事を忘れる程に。