第23章 追憶の果て
顔を上げると、微笑む赤井さんが顬に優しくキスを落としてくれて。
寝たくないのに。体は正直だから、徐々に瞼が重くなる。
優しく体を倒され、ベッドの中に入った。
『向こうは今どうなっているんでしょうかね...』
「今頃探されているかもしれんな、時間の流れは向こうの方が早いからな」
『確かに...なんて言いましょうかね?』
「そうだな、休暇とでも言おうか」
『ふふ それも悪くないですね。何も起こって無ければ良いですが...』
「それだけは願いたい所だな」
『向こうでの生活も想像したら楽しみになってきました』
「そいつは嬉しい言葉だ」
『でも、どうして記憶が無かったのか。それだけは分からないです』
「みなみ、それも心配をしていたんだな?」
更に重くなっていき、ベッドでの上がっていく体温と戦いながら首を縦に振る。
「言っただろ?こいつは迷子防止にもなるって。安心しろ、俺が絶対に探し出すさ。必ずな」
指を絡めて繋いだ手を上に挙げて、キラキラと輝くブレスレットを見せながらそう言われる事により、安堵に包まれた。
『はい、私も。赤井さんを探しますね』
「そうしてくれると有り難いな、大丈夫だ」
頭上から降ってくる赤井さんの優しい声と言葉と体温が
心も体もリラックスさせてくれて、迫り来る睡魔に抵抗が出来なくなった。
『赤井さん』
「ああ、安心しろ。俺も今から寝る」
『はい』
向かい合ったまま、それぞれのブレスレットが着いた方の手を絡めたまま
赤井さんの胸に顔を埋めた。
「みなみ、良い夢を」
『はい、赤井さんも...おやすみなさい』
額に優しくキスを落とされ、柔らかい感触が離れたのを確認出来た頃には
意識を手放した。