第21章 お咎め
「にしてもこんな場所だったとはな」
『結構不気味ですよね』
「そうだな。よくここから抜け出してこれたな、偉いぞ」
頭にポンっと手を置かれて急にそう褒められるとこんな状況でも胸がドキッとする…
「それにしても、何故今日は此処に?」
『あー…それは、まあ、ちょっと急に気になってしまって』
『というか、なんで赤井さんは私がここに居ると分かったんですか?』
「偶然歩いているお前を見かけたんだ、それから驚かせてやろうかと思ってだな」
『あー、なるほど』
赤井さんってそんな私を驚かせようとする様な人だったっけ?
何だか可愛いと思ってしまった
『あ、私が目を覚ましたのはここの2階です』
久々にその2階へ足を踏み入れると、やっぱりここも特に変わっていなかった。
『えーっと、確かここでこんな風にうつ伏せの状態で目を覚まして…』
該当する場所を身振り手振りで軽く再現をしてみたり。
赤井さんを見れば何かを考えている様で。
「さっぱり分からんな」
『ですよね…』
「此処がみなみの居た世界と繋げる場所なら、このビルに心当たりは無いのか?」
『いえ、全くです』
自分から来ておいて何だけど、此処に居ると体がゾクッとする感覚や恐怖心が芽生えてきた。
それに丁度陽が射さない様な場所で少し暗い。
そろそろ戻りたい…
『赤井さん…やっぱりもう此処は出ましょう。何だか怖いです』
「ああ。此処は良い場所とは思えんしな、そうしよう」
早く此処から出たくて急いで階段の段へ足を置く
「みなみ、滑るから気をつけろ」
『あっ、は、いっ……!』
自分でも分かって居たはずなのに、階段に貼り着く葉と土はウォーキングシューズとの相性がかなり悪かった
「おい、みなみ!」
片足が滑り、更に捻ってしまったせいで
赤井さんの声と共に差し伸べられた腕ごと階段から滑り落ちる。
階段から落ちるのは初めてだ。
痛いし、転がり落ちているというのに何故かスローモーションにも感じられて。
下に落ちた瞬間、何とか保っていた意識を手放してしまった。