第21章 お咎め
赤井さんも強く腕を回してくれて、片方の手で髪を撫でられる。
何も纏わず、言葉を発さずに密着しながらお互いに呼吸を整えるこの瞬間は幸せでもあって。
けど、赤井さんとはさっき...
ああやって約束したのに、結局こうやってしまった...
「みなみ」
『はい』
「みなみには話していなかった事があったな。恐らくみなみの事だから知りたがっているかと思ってな」
『話?』
「ああ、そうだ」
諸々を片付け、改めてさっきのテーブルの方に移動して向かい合って座る。
「安室君と俺の事だ」
ヒロさんについての話はあの時は聞けなかった。
だけど...赤井さんと零の事と来たらもうこれしか無いだろう。
『はい』
「安室君からは聞いたか?」
『はい、聞きました でも、訳があったんですよね?』
「ああ、そうだ」
『教えてください』
こうして、赤井さんからヒロさんの話を全て聞いた。
『そんな...事...』
そんな、誰も...悪くないじゃん...
こんな事実を零が知ってしまったら、考えただけで辛い。
そして赤井さんだって、ずっとこうして隠し続けている事もヒロさんを助けようとした事も赤井さんの優しさが強くて。
優しさなんて言葉で片付けていいレベルでは無いけど
零はいつかこの事を知ってしまう日がやってくるの?
こんな真実なら知らないままの方が遥かに良いのかもしれないけど、誰かを憎んだまま生き続ける事だって辛いに決まってる。
「みなみ」
『うん...』
「そんな顔をさせたくて話した訳では無い。みなみの中に存在する疑問を解明しておきたかったんだ」
『ありがとうございます』
「この事は他言無用だ」
『はい、勿論です。でも...ずっとそれを抱えてきたのって辛かったですよね』
「俺か?それは良いんだ 慣れている事だ」
淡々としてるけど、赤井さんだって色々あったんだし辛い筈。
そんな赤井さんを今すぐにでも抱き締めて、もっと、もっと愛したい
だけど、さっき誓ったし今の私にそんな資格は無い
今度は少しでも私が支えたいのに、それもさせて貰えない。
なるほど、これがお咎めか。