第15章 変化
帰れって言われても…
零はどうして私が家に居ない事を知っているのだろう
辺りを見渡しても零らしき人は見つからない。
まあ…堂々と居る訳無いだろうし、零ぐらいの人なら気配を消す事に慣れているし素人の私には無理な話。
「貴女も…あれを?」
1階と2階を見渡していると、臙脂色の着物の上から白い羽織物を羽織った老婦に話しかけられる。
『えっ?あ、ああ…まあ…』
きっとここから列の状況を確認していたと思われたのだろう…
まあ間違いでは無いけど、とりあえず話を合わせて少し笑う。
「今日は私もあのブローチを買いに来たのだけど…これじゃあ無理そうね」
綺麗なシルバーヘアで上品な老婦はそう言いながら笑うけど、どこか寂しそうにも感じる。
『いや、大丈夫かもしれませんよ!あれよく見たら整理券みたいですし!まだ間に合うかもしれないです』
「あら、本当」
『先に行って並んでおきましょうか?私はあのブローチ既に持っているので!』
「おほほ、良いのよ。気持ちだけ受け取っておくわね、ありがとう」
『は、はい…』
そう言って老婦は歩いていった。
エスカレーター向こうなのに…
「あら、そこに居たのね」
『哀ちゃん!ごめんお待たせ!』
「…貴女もあれを?」
哀ちゃんの視線の先にはやっぱりフサエブランドのショップがあって…
『ううん!ただ見てただけだよ』
「そうかしら、欲しそうに見ていたけど」
『昔フサエさんの話見た事があったからさ…懐かしいなって』
「そういえば、そんな事あったわね。博士ったら相変わらずもどかしいんだから」
そう言う哀ちゃんの小さな横顔はどこか誇らしげでもあり、嬉しそうでもあって。
「あー!ここに居らしたんですね!」
「探したぞ!」
哀ちゃんと歩いていると、光彦君達と無事に合流!
皆小さな袋を持っていて、何かを買ったみたい。
自分もとりあえずアクセサリーを買って抽選券を貰った。