第8章 小さな探偵さん達
和食の朝食を食べ終えて、準備を進める沖矢さん。
玄関先で沖矢さんに抱きしめられると、香水と煙草が少し混ざった匂いと共に安心感に包まれて。
罪悪感すら感じてしまう。
「みなみさん、行ってきますね」
『はい、お気をつけてください』
「ええ、ちゃんと良い子にして待っていてくださいね」
『勿論。沖矢さんも早く帰ってきてくださいね?』
「ええ、出来る限りは。何かあったら直ぐに連絡を入れるように、約束ですよ」
『はい』
体が離れると唇に軽く触れるようなキスをして、外へ出て行った沖矢さん。
この一連の出来事が恋人同士みたいで。
昨日の沖矢さんの発言も...
これから黙って零の居るポアロまで行くというのに、今は少し浮ついた気持ちになっている。
朝食に使った食器を洗って、10時ぐらいに家を出れる様にぼちぼちと準備を進めた。
沖矢さんの“用事”がいつ終わるかは分からないし、午後を回るより午前中の方がポアロの店内状況的にもそれが最適かと。
そして10時前に辺りを確認してポアロへ向かう
何だか疾しい事をしている気分でもあり...
毛利探偵事務所といろは寿司の看板が見えてくると少しホッとする
いろは寿司もいつか行ってみたいかも。
カランコロンと音を立てながらドアを開ければお腹が空く様な良い匂いに包まれる。
「いらっしゃいませ!みなみさん!」
『安室さん、こんにちは!』
「こんにちは、此方へどうぞ」
今日はテーブル席へ案内された。
カウンター席には二組お客さんが座っていて、恐らく誰も居ないテーブル席の方が話易いからだろう。
梓さんは休みみたいでマスターと二人で回しているみたい。
「あれ以降でしたので心配しましたよ?あまり返信も来ないし...何をしていたんです?」
『ああ...ごめんなさい...それは...最近その、少し忙しくて...』
「へえ...忙しいとは?」
『まあ...その...』
言葉に詰まってしまうと丁度良いタイミングでドアベルが店内に響き渡る。
「...後で必ず教えてくださいね?」
幸いマスターは休憩中だった為、少しやれやれとした様子の安室さんが対応しに行った。