第8章 リトルボーイ
「はぁ、散々な目にあった……。ジェスにも迷惑をかけたな。貴重な非番の日に」
「とんでもないです!私は楽しかったですから!子供のモブリットさんといられて」
「う、うん。……少し恥ずかしいな…」
ぽりぽりと頬をかいた彼に既視感を覚えつつ、嫌われていなかったことにほっと息をつく。
「その本…」
モブリットさんが視線を送る先に私も視線を移す。
先程読み聞かせた茶色い童話の本だ。
今思えば、東洋の昔話をこちらの国の言葉で再編した珍しい書籍だったので、子供のモブリットくんも目を輝かせていたのかもしれない。
それを見て、モブリットさんはもっと顔を赤くした。
な、なぜ今、このタイミングで?!!
「ほ、本当にすまない!俺はそんなに気安く君と…欲しいと思ったわけじゃないからな!!」
捨て台詞のようにそう言って走り去ったモブリットさんを、引き留めようとした手が行き場をなくしてそのままになる。
もしかして……記憶………。
私はその場にしゃがみこむ。
「……合わせる顔がないよ〜〜ッ!!!」
この後1週間ほど、モブリットさんと目を合わせられなかったのは言うまでもない。