第7章 ■汗と制服
生まれてから16回目の夏がやって来た。
もわっとする空気も、刺さる日差しも、流れる汗も実はそこまで嫌いじゃない。
慣れてきた制服のシャツとスカートを着て、靴下を履く。
前髪の最終チェックをしてカバンを持つと玄関に向かった。
見送りに来てくれたお母さんに行ってきますをしてドアを開ける。
いつもの変わらない光景。
左を向けば、同じ高校の制服を着た幼なじみと目が合った。
「おはよーモブリット!」
「おー、はよ」
家の門を出てモブリットと合流する。
並んで道路を歩き出すと自然と端っこに誘導させられる。彼は何も言わずに欠伸をしていたけど、私は紳士的な彼がずっと好きだった。
「夜更かしでもしてたの?」
「昨日は部活で遅かったんだよ。先輩の研究にまた付き合うことになってさ…」
あ、やらかしたと思った。
モブリットのこういう時の顔と声が、私は唯一嫌いだ。優しげな表情。ボヤいてるくせに柔らかい声。
私の様子にも気づかずモブリットは話し続けていた。
ひとつ学年が上でモブリットと同じ生物部の、ハンジさんという先輩。実際に会ったことはないけれど彼から常に話を聞かされている。
自由すぎていつも振り回されるけれど、彼女は研究や後輩たちに対して真摯で、俺はそんな所を尊敬している。話の締めくくりはいつもそんな内容だった。
私はモブリットが好き。
でもきっとモブリットは、先輩が好き。
最近やっと気づいたこの気持ちは、始まる前に既に終わっていたのだった。