第6章 -平和世界if- 幸福のあしおと
そう思うといても立っても居られなくなって、食後すぐに洗濯物を取り込みに行ったモブリットのいる庭へ出る。サンダルを履いた足でゆっくりゆっくり近づいて行く。たどり着く頃にはモブリットの作業が終わっていた。
「どうした?」
「ううん。なんでもないの。…何にもないからいいの」
「!」
目を丸くしている彼の側へよると、肩をそっと引き寄せられ、後ろ向きにハグをされる。
脇の下から通された無骨で大きな両手が、私のお腹に触れる。我が子の鼓動を腕に感じて、モブリットはどんなことを考えているんだろう。
「…ハンジさんの気持ちが今になってよくわかるんだ」
「どんな…?」
「雑務を放ってでも、自分のやりたいことをやること」
こんなふうに。
ちゅ、と見上げていた唇にキスが降ってくる。
「愛してる。ジェス」
「…私も。愛してるわ、モブリット」
どちらともなく、唇を重ねる。
「おっとと、また蹴ったわ。やんちゃだから、男の子かしら」
「いや?案外サシャみたいな女の子かもな」
「……どっちにしても、幸せね」
「ああ…」
とんとん、あなたの小さなあしおとがまた痛みとして伝わってくる。
腰を摩ってくれるモブリットの温かい手。無事に産まれたら、あなたもこの手で抱き上げてもらえるわ。
どうか元気に生まれてきますように…。
煌々と輝く一等星に、私たちは肩を寄せあって我が子の幸せを祈るのだった。