第2章 ゼロ距離
「落ち着け。落ち着けと言っているんだ、ジェス」
「なんか既視感あるセリフですね!副長!」
執務室の机を挟んで目をギラギラさせる後輩に嫌な汗を流しながら距離をとる。猛獣から逃げる際は目をそらさず、背中を見せずに後退せよと何かの本で読んだことがあったが、まさかこんな時に本能がそうさせるとは思わなかった。
目を合わせたまま机を中心に、私が反時計回りに逃げれば彼女も同じ歩数時計回りに追いかけてくる。その洞察力と行動力をどうして壁外調査中に発揮してくれないんだ。
数分前、事の発端となった自分の発言を後悔する。
どうしてあんなことを言ってしまったのだろうか…