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【短編集】海を見に行こう

第4章 一対の翼



周囲にいる全ての巨人を倒す頃には息が上がり、持っている刃が唯一斬れ味の残っている物になっていた。付着した血が蒸発するのも治まってきて、赤色と煙だらけだった景色がただの廃墟の街へ戻ってきた。

流れる汗を上腕で拭った時、見えた空に落胆する。

青空に黄色の煙弾。作戦続行不可の合図だ。
今日も私たち調査兵団は、仲間を失うだけだった。
しかし感傷に浸るのは後だ。ケイジが連れてきてくれた愛馬に跨ると前を走っている医療班を護衛しながら帰還するよう指示を出した。不在だったハンジさんも作戦通りであれば途中で合流するだろうから、あとは帰還中に出くわす巨人に気をつけるだけである。少し肩の力が抜けた。

辺りに巨人がいないことを確認すると、馬上から医療班の荷馬車を覗き込む。
そこには場所を開けるように避けられた物資と、真ん中に死んだように眠るジェスの姿があった。
一瞬背中が凍りついたが、彼女の胸が上下して規則正しい呼吸をしているのだと分かると安堵する。どうやら内臓までは響いていないようだ。これなら数週間で治るだろう。

_調査兵団で生き残っている同期はもう、俺を入れて4人しかいないからだ。

無意識に先程の途方もない怒りについて原因を結論づける。彼女は仲間であり頼れる相棒であり、それ以上の関係ではないと。

旧市街地で最初に戦った時を思い出す。
ジェスチャーひとつであそこまで連携できるのは兵団の中でも彼女だけだ。そして私は巨人との戦闘中という緊迫感の中であっても、彼女と心を通わせて戦うことが不謹慎だが楽しく、そして嬉しく思っていた。
もはや唯一と呼べる彼女の存在は、愛や恋といった関係だけで縛ってしまうには勿体ない気がする。

だから今は、このままで__。

「後方10m程の距離に小型の巨人発見!モブリットさん、指示を!」
「足は早くないようだからこのまま逃げ切るぞ!小さいからと言って油断せず俺についてこい!」
「はい!!」

緩んでいた頭を切り替えて先陣を切る。
ひとまず本部に無事帰還できたなら、目覚めたジェスをこってり絞ってやろう。
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