第4章 一対の翼
ウォールマリア陥落後、調査兵団本部がローゼに移ってから初めての壁外調査。
私はマリアの南東にある旧市街地で馬を走らせていた。
「進行方向に15m級巨人出現!避けることは困難かと!」
「わかってるな!戦闘は経験豊富なジェスと私に任せて、他は緊急時以外応戦せず、ガスや刃を温存しろ!」
「はい!」
「行くぞジェス」
「ええ。みんな!死ぬんじゃないわよ!」
作戦で不在のハンジさんの代わりにモブリットが班の指揮を執る。前回の壁外調査で仲間が死んでから新兵が多く編成され心配していたけれど、意外に冷静な彼らに安心して馬の上に立ち、見えてきた家屋の壁にアンカーを刺して飛び上がった。
手元の装置で刺していたアンカーを巻き取ると、目標との距離がぐんぐん縮まる。
違うルートから立体機動に移っていたモブリットも私の横を並走していた。目が合った時に手でジェスチャーをされたので、私は頷いて、巨人の腱を切るべくガスを少なめに吹かした。
私に気づいた巨人が落としたものを拾うような素振りで手を伸ばしてきたので、指の中でも特に力の入る人差し指、中指だけを切り落とす。
掴み損ねた巨人の脇の下を石造りの地面スレスレで滑ると腰の立体機動装置が少し接地して火花が散った。そのまま巨人の右足首にアンカーを打ち込んで腱を削ぎとる。
バランスを崩し膝を着いた巨人が切られていない左手を背中に回して私をまた捕まえようとしてくる。
しかしそれは巨人の顔側に飛んでいたモブリットに阻止される。
空中でくるくると独楽のように回転し、遠心力と体重の重さで一気に巨人の肩を切り落とすと、そこから出る蒸気に紛れて彼は巨人の視界から消える。
その間に私はもう一つの腱を切り落として次の攻撃に備えつつ、機動力を失った巨人の前方に待機した。
目がまだ生きている巨人が予想通り大きな口を開け私を食べようと上体を倒してくる。
すると、項が無防備になった。
「モブリット!!」
私の声に反応した彼が蒸気の中から外套を翻して現れる。スパンと降ろされた刃で項の肉が飛んだ。重力に従って倒れる巨人の頭を足場にして、私はガスを使うことなく屋根の上に飛び乗る。
「す、すげぇ……」
馬で追いついた新兵たちが蒸発する巨人の死体と私を交互に見て言った。うん。馬が来る前に瞬殺できたみたいで私も満足気に鼻を鳴らした。
「っみんな!!」
