第1章 最終奪還作戦の朝
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「ハンジさん!!」
前を立体機動で飛んでいた分隊長の背中を咄嗟に突き飛ばす。
それとほぼ同時に、獣の巨人によって近くに投石されてきたベルトルトが、雷鳴を呼んで地上に降り立った。
バチバチと空間が爆ぜそのすぐ後に爆風が生まれる。
真っ白になりつつある世界の中で、分隊長が古井戸へ落下していくのを満足して見送る。
尊敬し、死ぬまでついて行きたいと、私の忠誠を捧げたいと誓った唯一無二の上司に、最期の最期まで奉公できてよかった。
瞼を閉じると目の裏にジェスの顔が浮かんだ。
少ない非番の日しか帰ってやれず、恋人らしい事をそれ程してやれなかったように思う。
中央憲兵に追われている時は、不謹慎ではあったが2人でいられた時間が嬉しかった。
ずっとそばにいたかった。
これから彼女が涙を流せば、私は胸を貸すことも出来ず、彼女が笑顔になった時に笑い返すこともしてやれない。平和になった世界を共に歩むことも出来ない。
覚悟していたはずだった。
悔いのないように愛してきたはずなのに。いざその時が来ると、彼女を1人にしてしまう罪悪感や後悔がふつふつと沸き上がってきた。
それでも世界は、私の都合のいいようにはいってくれない。
吹き飛んできた瓦礫が頭に直撃し地面に落下していく。流れる血でぼやける視界の中、私は感じたことの無い苦痛に焼かれながら死を迎えた。
……愛してる。
どうか君のこれからの人生に幸あらんことを。
いってきます、ジェス。