第3章 My Honey
-おまけ・とある新兵視点-
調査兵団の入団式を終え配属先の班を教えられると、俺はすぐにでも調査兵団を辞めたい気分になった。
原因は同期であるカイル・ナイトレイと共にハンジ班に配属されたことにある。カイルとは訓練兵時代から同じ部屋割りだったこともあって、かれこれ4年の付き合いにはなるだろう。
トロスト区奪還作戦も同じ班で戦ったため、本来なら強い信頼関係があってもいいのだろうが、俺はどうしてもこの人間を好きになれなかった。
貧しい家で育った俺と違って、片親のくせに特に苦労した話も聞かないカイルは、愛情を注がれて育ったことが顕著だった。
困ったやつがいれば自分を犠牲にしてでも助けに行き、悩んでいるやつがいれば話を聞いて声をかける。一般的にはバカにされるような話をするやつの世迷言には笑わずに耳を傾ける…そんな聖人君子みたいなことが出来るのは自分に余裕と自信があるやつだけだ。
そしてその分類の人間は人脈や出世のチャンスに恵まれる。実際、その性格のお陰で同期の成績優秀者のほとんどはパッとしない成績のカイルを友人と呼んだし、教官もカイルのそういった部分は副官向きであると一目置いていた。
不公平だと思った。生まれた時から恵まれず、どんなに頑張っても上にはいけず。人脈も成績もなにもかも手にすることが出来なかった俺は、恵まれているカイルが妬ましくて大嫌いだったのだ。
同じ班になってもそれは変わらない。むしろ酷くなる一方だ。
なんでも、今度の非番の日に副長のモブリットさんを家に招待して食事をするらしい。今回は一体どんな手を使って上官に取り入るんだか。くそ。
今も目の前でカイルとケイジさんが雑談をしていて、俺は聞きたくもないのにカイルの欠点を探すのに必死で盗み聞きをする。
「カイルの町は確か花を育ててるんだよな?モブリットさんから聞いたことがあるよ」
「はい。球根に毒があるので忌避剤として高く売れるんです。人が摂取すると有害なんですが、気をつければ乾燥させてアクセサリーになんかにもできるんです。うちの町の人はみんなできますよ」
「へー!なんていう花なんだ?」
「それはもう知ってるじゃないですか。俺の村の名前がそのまま花の名前なんですよ」
…本当に気に食わない。
カイルが欠点を作るには人を殺すくらいしないとダメなんじゃないかと結論づけた。
