第14章 海を見に行こう
「海に行きたい」
白いカーテンがたなびくと、ジェスの髪も同じように流れる。
窓の外を見つめていた彼女は、思い出したようにぽろっと呟いた。
夏が到来したと同時に地獄の卒論が始まり、昨日やっとそれをやっつけられた。
今は、不足していた恋人との時間に多幸感を覚えながら、彼女の隣でウトウトしている所だった。
年下ではあるものの、どこか落ち着いた雰囲気のあるジェスからのお願いに俺は二つ返事で受け入れた。
初めてのわがまま(?)に頼られてる気がして嬉しかったのかもしれない。
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車を駐車場に停め、ドアのロックを確認してから、反対側のドアにいる彼女の手を自分の手で包み込み歩き出す。
潮風のせいかジェスの指先が冷たい。
俺の熱を移すように、ぎゅっぎゅっと手の力を入れたり緩めたりしていると「なにしてるの?」とクスクス笑われた。
つられて俺も笑う。
そんな風にして波打ち際の砂浜に、二人分の靴跡を残して行く。
ああ、幸せだな…。
こうしているだけで蓄積した疲労感なんかがすうっと、消えていくような気がした。
いつか、二人でこんな日々をずっと過ごしていけたらいいな。なんて、同棲する俺たちを妄想してにやけてしまい、そんな所を見られてないか、横目で彼女を確認した。
赤い海と夕焼けをバックにしたジェスは眩しくて目が痛かったが...
それ以上に、目に飛び込んできた景色に頭の中が真っ白になっていった。
「どうしたんだ?!!」
ジェスは泣いていたのだ。