第11章 結婚しよ!
朝。第四分隊副長、モブリット・バーナーは物陰を移りながら食堂に続く廊下を移動していた。
さながら、誰かを尾行するスパイのような身のこなしである。
しかし彼は誰も追いかけていない。
むしろ追いかけられている為に、物陰に隠れながら食堂への道を急いでいた。
今彼女に見つかってしまえば先日のように朝食にありつく時間をなくしてしまう。
今日は午後からハードな訓練を控えているため、燃料は補給しておきたい。
しかし、そんな彼の願いも虚しく、遠くから石造りの地面を駆ける音が近づいてきた。
「……ット」
「っ!」
「モブリットー!!」
「うわ!」
慌ててキョロキョロと当たりを見回したのと、彼女が飛び込んできたのが同時だったせいで、モブリットは勢いそのままに床に倒れ、カエルのように呻き下敷きにされる。
仰向けになった腰に跨る彼女…ジェス・ナイトレイは、今日も懲りずにいつものセリフを、知っている歌詞のように口ずさんだ。
「モブリット!結婚しよ!」