第3章 My Honey
サァァァア……と吹く心地よい風が、見渡す限りの美しい花畑を撫ぜ私の前髪も揺らす。
仰向けになって見る天井は快晴。ウォールローゼ南東の町は今日も平和だ。
「ジェス!またここで寝て……。お前になんかあったら、俺が母さんに怒られるんだぞ!」
「モブリット」
見上げていた空をバックにして、幼なじみが私を覗き込む。突然現れたものだから思わず驚きの声が出た。
「帰るぞ。もう勝手にどっか行くなよ」
「えー。だってお使いめんどくさいんだもん」
「わがまま言うなよ。ほら」
「ん……」
差し出された手を掴んで立ち上がる。
その途端またぶわりと風が吹く。
「……こんな風に乗って、空をとべたら壁の向こう側へ行けるのかな」
「………………バカじゃないの」
「なんとでも言え」
ガキんちょの時はすぐに掴みかかってきたくせに。澄ましやがって。
来年12歳になる私たちの間の時間が、確実に過ぎていっているんだと実感してしまい、唇を噛んだ。